重機が1台も入らない大山の山頂で、107mの木道を架け替えました
令和7年3月末から12月まで、鳥取県(環境建築局)から発注いただき、大山(だいせん)の登山道の木道を架け替える工事を行いました。延長は107メートル、現場は大山隠岐国立公園・大山の山頂部です。
改修前の木道は、手すりが失われている箇所や、踏み板が腐って傷んでいる箇所がありました。登山者が転倒する危険のある状態です。当社は令和2年度からこの木道の整備・改修を繰り返し担当しており、うち3件で鳥取県の優良工事表彰をいただいています。
この工事の性格を決めているのは、ごく単純な条件です。現場まで工事車両が入る道がない。トラックもクレーンも1台も入りません。ここから逆算すると、工事のやり方がほとんど決まってしまいます。
上げるのはヘリコプター、下ろすのは人の手
新しい木材や金物は、ヘリコプターで搬入しました。飛ばす日は事前の飛行ルート調査で決め、当日の朝にも気象条件を確認してから判断します。天候ひとつで工程が止まるため、ここは読みの精度が問われました。
人と細かい資材は、資材運搬用のモノレールと自分の足で上がります。毎日の通勤が登山になるので、作業員の体調管理は工程よりも優先しました。
そして、いちばん体力を使ったのは新設ではなく撤去でした。既存の木道の基礎は1本あたり約120キロあります。重機が使えないので、現場で人が運べる大きさまで切り分けてから、人の手で下ろすしかありません。68メートル分の基礎を、この方法ですべて下ろしました。

特別天然記念物の林の中で施工する
大山の山頂部は、国の特別天然記念物「大山のダイセンキャラボク純林」です。ここでは、作業スペースを既存の木道の幅に厳しく限定しました。植生の中へ一歩踏み出すこともしません。仮設材の下には養生を敷き、土をかき乱す掘削は最小限にしています。
そのうえで、木の根を避けて基礎の位置を現地で調整しました。設計どおりの位置に打てないとき、根を傷めずにどこへ寄せるか。これを現場で判断できるかどうかが、この工事の成否を分けます。
測量を細かくして、手戻りをなくす
精度を上げるために取った方法が、1.5メートルピッチの詳細測量です。
通常よりも細かい間隔で高低差と曲率を拾い、そのデータをもとに柱を1本ずつCADで設計しました。加工寸法まで算出したうえで山上で加工するので、現場で「合わない」が起きにくくなります。段差のない滑らかな木道に仕上がったのは、この測量密度によるところが大きいと考えています。
デジタルで設計して、最後は現場の微調整で合わせる。この組み合わせは、地形が複雑な現場ほど効いてきます。当社としては、木道の施工でここまで測量密度を上げるやり方を続けてきた蓄積があります。
観光地であることが、安全計画を変える
施工中は当該の登山道を通行止めにしていましたが、それでも周囲は登山者が行き交う場所です。朝と昼の打ち合わせでは、作業員自身の安全と同じ重さで、第三者への災害を毎回確認しました。
もうひとつ徹底したのが「勇気ある撤退と休息」です。山頂の天候は変わります。無理に工程を進めない、装備は軽くする、水分補給のルールは決めておく。ここを崩すと事故に直結する現場でした。
地盤が硬い露岩であることは、着工前から想定できていました。過去に同じ工事を何度も経験しているので、硬い岩が出ても対応できる工具を先に用意しておけました。想定外が少なかったのは、運ではなく積み重ねだと思っています。
この技術を、次の世代に渡すために
一方で、この現場のやり方はまだ手順書の形になっていません。1.5メートルピッチの測量、柱ごとのCAD設計、山上での加工、ヘリ搬入の気象判断——これらはまだ、担当した技術者の経験として蓄積されている段階です。
手順として書き残し、若手が同じ現場に入れる形にする。現場を担当した技術者は「自分だけでなく、次の世代にも同じような工事をしてもらいたい。だから指導の方に回りたい」と話しています。それを個人の心がけで終わらせず会社の仕組みにするのが、取締役である私の仕事だと思っています。
地元の方や登山者から毎日のように声をかけていただける工事でした。人に喜ばれる工事をすること、同時に自然を守ること。その両方を持って施工すれば必ず良いものができる——これは現場が出した結論です。
*本記事は、当該工事を担当した1級土木施工管理技士 土山伸吾の監修を受けています。